「社会的証明」の例10選 -『影響力の武器』を解説

YESを引き出すための5つテクニックが紹介されている『影響力の武器』という本をご存知でしょうか。

商品販売にもつながるテクニックとして、広告業界ではよく知られた一冊であり、メンタリストのDaiGoさんにも大きな影響を与えたみたいです。

5つのテクニックを1つずつ丁寧に噛み砕いてご説明していきます。感覚的にも理解できるよう、身近にある「社会的証明のルール」も10個リストアップしてみました。

社会的証明のルールとは?3つのポイント

ポイント1:みんなと同じなら間違いない

社会的証明のルールとは、人は数多くの他人が支持する行動や意見を正しいと思い、模倣しやすいことをいいます。

著書の中では、テレビのバラエティ番組の笑い声が例として挙げられています。明らかな演出とわかっていても、多くの他人が笑っていると、人はそれが笑いに値する状況だと判断するのです。

他人を模倣しようとする心理は、子どもから大人にまで備わっており、多くの場合はより合理的な行動へと至る近道になります。

しかし、他人のまねをする際、その他人も誰かのまねをしていることが多く、全員で間違った方向に突き進む「集合的無知」の状況に陥ることがあります。

ポイント2:「不確かな」状況が火をつける

社会的証明のルールは、特定の状況でより強い効果を発揮します。

その一つが、先が見通せず、前例も存在しないような不確かな状況です。

著書の中では、食料品店に初めてショッピングカートを導入するときの例が挙げられていました。買い物客は当初、ショッピングカートを奇妙に思い誰も使おうとしてませんでしたが、いわゆる「サクラ」を雇い、ショッピングカートを持って店を回らせたところ一気に浸透したそうです。

ポイント3:似た人についていく

もう一つ、効果が強くなる状況は「類似性」です。

自分と似ている人の行動ほど、自分にとって参考になると人は考えます。

たとえば、大学で寄付を募るシチュエーションで、「私もここの学生です」と告げると寄付が集まりやすくなったそうです。

身近な「社会的証明のルール」の例10選

『影響力の武器』は海外の文献のため、事例にあまりピンと来ないこともあります。

そこで、現代日本で見られる社会的証明のルールを挙げていきます。

1:「一番人気」

人気ランキングのイラスト文字「No.1」

「一番人気」「売れてます!」「お客様満足度95%」などの言葉は、社会的証明のルールが効果を発揮する典型例です。

アフィリエイトサイトの中には、人気ランキングという名目で、上位に収益化目的の商品を紛れ込ませるという手法もあるため、注意が必要です。

2:Amazon’s Choice

「Amazon’s choice」の画像検索結果

Amazonのアルゴリズムはもはや社会的証明。Amazon’s Choiceは売上高とレビューをもとに選定しているとみられます。

実際に、品質と価格のバランスが取れた良品が多い印象があります。

3:タピオカ店の行列

タピオカミルクティーを飲む人のイラスト(女子学生)

「行列」も典型的な社会的証明です。並んでいる景色が最大の広告となります。

行列を絶やさないために、あえて店内を狭くして回転率を落としたり、供給量を減らすという手法も取られます。

4:化粧品の口コミ

ネットの口コミのイラスト

化粧品を選ぶときは、もちろん成分だけで選ぶわけではなく、口コミで支持されているものを選びたくなります。

特に、口コミの「類似性」が鍵となります。

自分と同じ肌の悩みを抱えている人や、あるいは自分と似ているが憧れの対象でもあるInstagramerによる口コミが威力を発揮します。

5:トイレットペーパー争奪戦

トイレットペーパーのイラスト

2020年3月、コロナウイルスの流行によりマスクが品薄となりました。

驚くべきは、マスクだけでなくトイレットペーパーをはじめとする日用品が次々と品薄になり、コンビニやドラッグストアから消えていきました。買い占めて転売する人も出てきました。

政府が慌ててトイレットペーパーの在庫は十分ですと声明を出すほどでした。

根拠のない品薄は、「周りの人が買っているから、私も買わないと」という社会的証明のルールに則ったものです。

6:自殺の連鎖

負の連鎖のイラスト

有名人の自殺が報道されると、同じような年代の一般人が後追い自殺することが知られています。

この点については、著書の中にも詳しく書かれています。

7:もらい泣き

感動する男性のイラスト

感情という自然発生的なものであっても、周りの状況が社会的証明となり、影響を及ぼします。

卒業式など周りが泣いている状況、あるいは社会的に泣くことがふさわしいと考えられている状況では、人は泣きやすくなります。

著書の中では、中米の葬式では「泣き女」を雇い、悲しいムードを盛り上げる例が紹介されています。

もちろん、テレビ番組の笑い声も同じです。

8:一同驚愕

ネット動画のフレーム素材(16:9)

一時YouTubeで、「○○(有名人の名前)が○○(有名人の名前)に言い放った一言に一同驚愕」のようなタイトルの動画が数多くアップされました。

一同驚愕の「一同」って誰?という感じではあるのですが、動画の多くがユーザーのクリックを誘発し、再生回数を順調に稼いでいました。

ライティングのテクニックとして、本人の発言だけでなく、周りの反応を入れると説得力が上がるというものがあります。「一同驚愕」は一見意味がないように見えて、リアリティーを演出していたのです。

9:株のバブル・暴落

バブル世代の人々イラスト

株は企業価値だけだなく、感情によっても乱高下します。

みんなが株を買っているからor売っているからと、次々と追従する人が出てくることでバブルや暴落が生まれます。

10:面接で「すでに3社から内定」

1対1の面接のイラスト(女性)

就活の面接では、すでに他社から内定が出ている学生の方が、「他社も高く評価している」ことが安心材料となり、面接を通過しやすくなるはずです。

人という多面的な存在を評価するというのは、ある種「不確かな」状況であり、そのために人気のある人に内定が集中していく傾向があるのだと思われます。

まとめ

いかがでしたか?

日本人は周りに合わせる民族とよく言われますが、この性質は(程度の差はあると思いますが)世界共通なのです。

みなさんも人気というだけで商品を買うのは危険かもしれません。

一方、広告する際は「いま人気」という雰囲気を醸成することが大切になるのです。